日本の中国語表示(繁体字と簡体字) その6

このシリーズの最初の投稿が2007年のことなので、もうはるか昔のことになったんだけど――

当時は、中国語表示としては簡体字ばかりが登場し繁体字が置き去りになっていたので、
中国語利用者を一緒くたにはできないという問題提起のつもりで書いたんだよね。
日本の漢字は繁体字と簡体字の中間にあるから、両者を類推できるけど、
繁体字から簡体字を見る場合、簡略化し過ぎて読みこなすことは難しいのだ。
今はもしかしたら中国人も世界に進出していて、いろんなところで簡体字を見る機会があるから読めるかもしれないけど、でも、その漢字を読みたいかという問題も実はある。
台湾人と簡体字中国語」も見てね。

でも、今となれば、中国語の表示は簡体字も繁体字も用意されることが多くなってきているよね。
個人的な感覚だけど、観光庁ができて以降、2010年代に入って少しずつふえてきた気がしている。
 
北海道は前からあったのかもしれないけど、北海道は繁体字も簡体字も両方そろえていて、場所によっては訳語が違う。
けど、香港人もタクシーは計程車なのかな?

それで、きょうのトピックだけど、すごく簡単なことなんだけど、
中国語の表示で簡体字と繁体字の両方があるときは
この文字は「中文(簡体)」「中文(繁体)」とか表記するのがいいということだよ。

「中国語」でも言わんとすることは通じるんだろうけどね。

台湾の空港で見た例だけど、中国語のパンフレットは「中文」だよ。
日本語は「日文」だろうけど、パンフをとる日本人のことを思ってか、「日本語」となっている。

こうやって書くのは、たまに「台湾語」というのを見つけるから。

日本人として繁体字とか簡体字という言い方がそれほど普及しているわけではないこともあるし、
中国は中国語だから、台湾は台湾語という発想なんだろうけど、ちょっと違うよね。
音声言語資料であれば台湾語もありかもしれないけど、文字媒体で台湾語はおかしいと思う。
台湾語と国語をめぐる勘違い」も見てね。

ちなみに、繁体字の利用者は香港人と台湾人となるけれども、両者は文字表現としてはほぼ同じなので、同じでほぼ読める。少なくとも、簡体字よりも読めるはず。
それから、上記の資料表示には深い意図はないだろうけど、仮に、繁体字利用者のうち、あえて香港人を排除し、台湾人だけということにしたいのならば「中文(台湾)」とするのかなと思う。

このトピックのまとめだけど、
今となれば、繁体字、簡体字の両方の文字表示を見ることがふえてきていて、今後は表示というよりも文章、中国語資料の質の時代に入るのかなと思う。
目下のところは、日本語の原文をそのまま、日本人ならわかる論理表現をそのまま訳しちゃうから、あれれ?ってなるものがあるように思う。というか、うちの会社でも、ある超々有名な翻訳会社に頼んだ訳文というのを見たら、そんなのになっていたことがあった。
さらに言えば、日本語は文脈依存で、結構省略もあるから、そこを加味して文章を足さないと、外国人にはわからないこともたくさん出てきちゃう。
台湾では、明らかに昔の表現だけど、これは日本語を知っている人の手によるものだという日本語情報に遭遇するときがあって感動を覚えるわけで、
日本でもそれとは違う形だろうけど、日本の知識と文才のある台湾人の手をかりて、台湾人をして嘆息させるとまではいかずとも、違和感がない中国語情報がもっと出てきてもいいなと思う。その辺が今後の課題かなと思う。

最後に、この話題とは関係ないんだけど、上記の写真のパンフレット中にある「日本には富山がある」、どう表現すればいいと思う?
簡体字のパンフレットには「日本有富山」とあり、繁体字は「日本的富山」となってる。

パンフレットにある訳語、「日本有富山」だと機械翻訳っぽい?、むしろ「日本的富山」のほうがいい?
というか、直訳すれば「富山在日本」じゃないかという気がするんだけど、
富山県のサイトでは「富山的日本」になっているし。
日本語と文字バランスを合わせるなら「日本富山」と、のところに漢字を入れればいいと思うんだけど――あともう一ひねり必要?

過去のシリーズのリンクを張ったので、よかったら見てね。
その1 中国語の漢字タイプには簡体字と繁体字があって、台湾人は繁体字を使うということ。
その2 繁体字表示が珍しかった当時、沖縄で見つけた実例紹介
その3 簡体字の漢字を繁体字に変えただけでは正しい表現にならないという指摘
その4 当時繁体字利用の外国人観光客が多かったのに日本では簡体字情報が多かった実情紹介
その5 台湾人は簡体字をそれほど知らないし、勉強する気がないという当時の統計結果紹介