震災での一連のことを通じて、台湾人とのきずなを確認するなんていうことがあるけど、
実際に、「絆」という言葉を使って「我們的絆」「日本和台灣之間的絆」などとうれしそうに話しても、
それで台湾人に通じるのだろうかと思う。
「絆」(ban4)という言葉で真っ先に浮かんでくるのは、動物とかをつなげるひもとか手綱とかだよ。
確かに、日本語の辞書にも、絆の意味として出ているよ。
あるいは、何か足をかけて人を転ばせるような、わなを用意して人を転ばせるような、そんな動詞。
熟語とかでも、こういうのが派生するから、「羈絆」(ji1ban4)は束縛するという意味、
マイナー過ぎて多分使う人はいないだろうけど、「紲絆」(xie4ban4)という、一見何かすごくすばらしい心のつながりがあるような言葉も、邪魔するという意味になる。
ぶっちゃけ、その漢字を見て、いい意味としてはとらえにくい言葉かもしれないんだよね。
先の震災に関して、菅総理が世界に発したお礼の文章、そのタイトルは「絆」だったわけだけど、
「絆 Kizuna – the bonds of friendship」
そのお礼の文章の繁体字の訳文は、「厚重情誼」になっていたわけで、「絆」にはなっていないんだよね。
「厚重情誼 (Kizuna) Kizuna - the bonds of friendship」
厚重情誼(hou4zhong4qing2yi2)というのは、タイトルづけのためにつくられた言葉であって、熟語というわけではないので、
この言葉を使って、絆を中国語で言いたいときには、「情誼」(qing2yi2)ということになるのかな。
普通に考えれば、絆を翻訳すると、「友情」(you3qing2) 「情」(qing2)ということになるのだと思う。
でも、実はこの字では意味が軽い感じがして、どうもすっきりしないね。
願わくば、日本語にあるニュアンス&世界観をそのまま持ち込んで、言葉として定着させてもらいたいぐらいだ。
なお、「絆」については、日本の漫画やアニメにはよく出てくるから、
台湾人がこの言葉を全く知らないというわけではないよ。
とはいえ、卑近な例を挙げると「NARUTO疾風伝 絆」というのがあるけど、
中国語のネットを渉猟していると、「絆」ではなく「羈絆」としているのも散見されるわけで、
つまり、ナルトとその周りの心温まる物語というのとは、およそ逆の意味でとらえられている可能性があるわけで、
こうなると、その漢字を知っていても、こちらが伝えたい深くて好意的な心のつながりというのが、どこまで相手に伝わっているかは、わからないんだよね。