台湾で記念碑とか何かメモリアルだろうものを見ていて気がつくかもしれないけど、
台湾では、そういうときに「記念」ではなくて「紀念」を使っていることが多い。
例えば、中正紀念堂という台湾観光する人ならだれでも行きそうな場所があるよね。
そのまま「ちゅうせいきねんどう」と呼んでしまうけど、実際には「記念」ではなくて「紀念」。
日本語で打とうとすると中正記念堂とかになって、中正紀念堂とすんなり打てないから、
「紀念」という言葉自体は中国語なのかな。
「紀念」も「記念」も読み方はji4nian4なので、
日本人が頭の中で「記念」を描きながら発音しても、口頭でのやりとりで困ることはない。
また、「紀」「記」は入れかえが許容であって、「記念」と書いても実は間違いではない。
とはいえ、文字化するときには「紀念」が使われる傾向があるみたい。
たとえば、台湾でも「結婚記念日」という言葉があるんだけど、
これをキーワードにして軽くググってみても、圧倒的に「紀念」が使われている。
「結婚紀念日」は、約72,900件
「結婚記念日」は、約2,800件
「紀」「記」という文字の入れかえがあるのは、「紀念」「記念」だけじゃなくて、
例えば「紀錄」「記錄」とかもそうかな。
日本語で「世界新記録」と言いたい場合には、「世界新紀錄」(shi4jie4xin1ji4lu4)とする方が多いと思う。
ただし、「記録」を動詞で表現したい場合は、「紀錄」ではなく「記錄」となるし、
「会議記錄」「法廷記錄」とはいっても、「会議紀錄」「法廷紀錄」とはしない。
語彙や品詞によっては、両者の入れかえができないこともあるよ。
ちなみに、日本語で言うときの「世界新記録を記録した」は、
「寫下了世界新紀錄」(xie3xia4le)、「創下了世界新紀錄」(chuang4xia4le)、「刷新了世界紀錄」(shua1xin1le)となり、
こういうときに動詞で記録するという言葉は選ばれないよ。
あと、話は戻るけど、
日本語で「きねん」というと、「記念」のほかに「祈念」があるけれども、
台湾では「祈念」は使われない。
例えば、平和を祈念するという表現のときは「祈求」(qi2qiu2)とかを使うだろうね。
祈念=祈求 といえば
先般は私のコメントをもととした記事、ありがとうございました(1つの建物で複数の異なる道路名の住所の件)。
ところで、本文とは若干ずれる話題ですが、中国語では日本語の「祈念」に該当するのが「祈求」とのこと。これから連想したのが、時折見られる風船飛ばしです。台湾のアルバムサイトで、時折「許願氣球」の名で風船飛ばしの模様が載っています。
これって、「祈求(qi2qiu2)」と「氣球(qi4qiu2)」を引っ掛けたものかなと思ったのですが、…考えすぎですかね?
なるほど!記録と紀録、そういう使い分けがあったんですね。勉強になりました!
質問ですが、いくつかの文字が文字化けして見えるのですが、エンコードすれば正しくみえるのでしょうか?
携帯電話からの閲覧ですか?
(スタッフZさんへ)
こんにちはszyuです。コメントありがとうございます。
文字化けについては、こちらではパソコン環境のIEとfirefoxでは対策をしています。
なお、携帯電話からは残念ながら、こちらの能力では対応しきれない部分ですので、パソコンから閲覧いただくことをお勧めします。
あと、永康街、行ったことがあります。
過去、もう一人の書き手と台北で会ったときに、永康街と散歩したことがあります。
そのときに写した写真を使ったトピックが以下です。
台湾の住所表示 http://umesakura.jp/20050623222516.html
取り急ぎ――と思ったので、コメントが多くなって済みません。
☆☆☆
晚安
我之前有聽老師說過 兩個字的不同
記 與 紀 前者表示 有段落 單次 的意味 後者 有糸字部 表示 連續 無間斷 的意味
所以 一般事件 多半用 記錄 表示 有 紀念性 連續性
的意味 要用 紀 表示
記錄與紀錄 前者用來表示將所見記下來的意思(可能不是特定或被要求之事物) 後者有一種被要求 連續性記下特定事物的意思
以上 想給大家參考一下
コメントありがとうございます
(Gontaさんへ)
こんにちはszyuです。コメントありがとうございます。
祈求と氣球が掛詞になっているかどうかは、そういうふうに解釈することはできそうですね。そういう一種のしゃれみたいなのは台湾の中ではあり得るのかなと思います。とはいっても、その目的がためにわざわざ風船を膨らませて飛ばす準備まではしないのかなという気がします。
それから、御紹介のブログは、下のものですね。
「台湾の角地の建物の住所」
http://umesakura.jp/20100401231015.html
実は地図をつくるのに手間がかかったトピックでした。
☆☆☆
(Alanさんへ)
こんにちはszyuです。コメントありがとうございます。
かなり細かい解説をいただきました。
前に先生から聞いた話では、この2つの字には違いがある。
記、紀について、前者(記)は区切り目があって、単発的な意味。後者(紀)はいとへんがあるということで、連続的で途切れ目がないという意味。
したがって、一般的な事件には記録を使い、連続性があるときは紀録を使うことになる。
記録と紀録の場合、記録は見たものを記録するという意味(意図的なものではない)、紀録は意図されたもので、連続的で特定されたものということ。
参考になれば幸いです。
――ということですね。
なるほどと思いました。
そうなると、例えば中国にあるいわゆる紀念館は、見たものを展示しているのではなく、政治的に意図されたものという理解になるんでしょうか。
☆☆☆
元々は「紀念」なのではないでしょうか。
つまり「記念」は、誤用が広く流通してしまった結果、
現在では常用漢字として認められているのが日本。
ですから、
お寺や神社に行くと、戦前の石碑に、
確かに「○○紀念」と書かれているのを目にします。
具体的な例だと「日露戰爭生還紀念」とか。
(何足道哉さんへ)
こんにちは。正直に申し上げれば、御指摘のことはそうなのかどうかはちょっと私にはわかりません。
このブログのトピックではそこまで突き詰めるだけの根拠が見つからず、このような書き方になりました。
このトピックの主眼は「記」「紀」のどっちを突き詰めていくということではなく、台湾では「記」ではなく「紀」というのも結構頻度で出てくるんですよということでした。
例えば、国会会議録の検索は時系列的な表記サンプルがよくわかると思って使っているのですが、会議録上で「紀念」を使っているのは「天然紀念物」「憲法紀念日」「建国紀念」「○○紀念事業」という名詞的なものでした。
ただ、動詞的な「紀念する」というのがあるかどうかは、帝国議会会議録は本文検索できないので、申しわけないのですが、時間の制約上検証できませんでした。
文化庁に似たような書き込みがあったので、それを貼っておきます。
「「記念」と「紀念」――今日では,「記念」のほうが広く行なわれていて一般的であり,「紀念」はあまり使われない。「史跡名称天然記念物」というように,「記念」を使っている。
したがって,今日,「記念」を採ることに異論はないと思われる。このうように,漢字表記にゆれがあるといっても,その一方が一般的であるということで解決のよりどころとすることができるものもある。」
出典 「第5期国語審議会 第2部会 語形の「ゆれ」の問題 漢字表記の「ゆれ」について(報告)1」
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kakuki/05/bukai02/04.html
こんなところで、よろしくお願いします。