中国語の文字には大きく繁体字中国語と簡体字中国語があることはずっと書いてきているんだけど――
その上で、中国が簡体字を使っていて、台湾と香港が繁体字を使っていると考えると、人口ベースで考えれば、簡体字使用人口は圧倒的に多いわけで、
だったら、じゃあ日本の国内で中国語でインフォメーションをつくるんだったら、簡体字でいいかなと考えてしまいそうなんだよね。
もちろん、日本に生活している人たちで考えれば、多分、簡体字のニーズは多いと思う。それは否定しない。
でもね、少なくとも、外国から日本へ来た旅行者向けということを考える場合、状況は逆転する。
観光インフォメーションを簡体字中国語だけで用意するのはどうかなと思うんだよ。
ちょっとグラフをつくってみたので、見てみてね。
一つは法務省の新規入国者の統計、もう一つはツーリズムマーケティング研究所というところから統計を引っ張ってきてみたものだよ。
わかりやすいように、上位5国・地域の観光客の繁体字使用と簡体字使用の別を色分けしてみている。
グラフの赤い線が中国、青い線が台湾と香港だよ。台湾だけを見たい人はピンクの線を見てね。
ちなみに、シンガポールは簡体字、マレーシアは繁体字とか、華僑はどうしたという数値はもちろん入ってていない。しかしながら、言葉を純粋に漢字に強く依存し、かつ完全なリテラシーがあると思われるのは中国、台湾、香港だと思うので、それ以外はこの際は入れなくてもいいと思う。
繁体字と簡体字、どちらの利用人口も、かなり多くの人が日本にやってきているのだ。
しかし、このグラフを作成している2006年度末現在では、簡体字中国語使用者より、むしろ繁体字中国語使用者の方が日本によく来ているとも言えるわけで、特に外国からの来日した観光客となると、その数は決してインフォメーションづくりが簡体字中国語だけでいいというふうに済ませられない数になっていると思うんだよね。
こういうふうな書き方をしたのは、今、日本でもやはりアジアでの観光客を呼び込もうと一生懸命になっている。そして、インフォメーションとして中国語のパンフレットを用意しているところが多くなってきているんだけど、実は簡体字しか用意されていないところも多いからだよ。
それは、日本人の担当者の側が中国語に簡体字と繁体字があることをよく認識していないというのが圧倒的に大きな理由だと思うけど、それだけじゃないよ。
この両者を後から認識できたたからといって、お役所的な仕事の場合、最初の企画の中で繁体字というオプションを入れておかないと、途中から新規に繁体字中国語を追加する可能性はほとんどない(予算がないOR取れなさそう)というのも事実だと思うから、特に観光インフォメーションについては最初から繁体字も忘れずにお願いしたいと、今この時期でアピールしておきたいと思うのだ。
次回は、最後に、エモーショナルなことに触れて、この連載を終わりにしたい。