例えば、台湾人と台湾で食事をしようとして、じゃあ、ということで台湾人から「你想吃什麽?」とか聞かれたりすることもあると思うんだよね。
もちろん、何か具体的に食べたい物があればいいんだけど、実は、そこまである特定の食べ物に命をかけるように食べたい!と思うことは、まれなんだよね。
台湾人から、何が食べたいのか何がいいのかと追及されれば、台湾で何が食べられるかよくわからないから、結局ガイドブックをめくったりして、例えば、鼎泰豊の小龍包はどこのガイドにも出ているから、まあそういうものが食べられればいいのかもとか言ってしまうかもしれない。
けどさ、大枚はたいて行かなくても、別にその店じゃなくてもうまい小龍包はあるだろうという話を台湾人はしたくなるかもしれない。それに、言っている側としても、そこまでその店にもこだわっていないし、その品目にもこだわりはないんだけど、何が食べたいのかよくわからないから次善の選択として提案しているだけということがあるかもしれない。
食べたいものはどうでもいいというほど投げやりではないけど、台湾にいてそこの地域のそれなりのものが食べられればそれでいい、あわよくば台湾人自身が自分の日常を紹介してくれればいいと思う――そういうファジーな気持ちを伝えられる言い方を今回は書きたいんだ。
まず、レストランや食堂やどこかの屋台でも何でも、台湾人から「你想吃什麽?」から聞かれて、きっと一番答えたい答えは、「何でもいいよ」だと思うんだよね。それは、「都可以」「沒意見」と言う。
もちろん、その後何か次なる言葉が必要だと思うので、「あなたがオーダーしてくださいよ」ということで、「你來點」と言う。「點」ではなくて「叫」を使って「你來叫」と言うこともできる。「叫」の方が発音しやすいかもしれない。あるいは、「你點」「你幫我點」と言ってもいい。
そうやって言われても台湾人は困るので、また工夫して台湾人に何とかしてもらうように努力したい。
「あなたがいつも食べているものを食べたい」という場合は、「點(or 叫)你常吃的」「你平常吃什麽就點(or 叫)什麽」と言う。
「何か台湾らしい物が食べたい」という場合は、「我想吃台灣特有的」「你想吃台灣獨有的」と言う。そんなことを言われても、日本人や世界の食生活を把握していないだろう市井の台湾人は困るだろうけど……
「普通の人が食べているものを食べたい」という場合は、「我想吃一般小市民吃的東西」と言う。
とにかく、これで、台湾人も困りながらも何とかしてくれるでしょう――
もし、ガイドブックを持っているのであれば、ガイドブックはお互いにコミュニケーションの助けになるかもしれないけど、やっぱりガイドと同じことをしてもつまらないから、「ガイドブックには出てないおいしい物を食べたい」と言いたくなるかもしれないね。その場合は、「我想吃這本書上沒有的好吃的東西」と言う。
そして、やっぱり、日本人の心理としては使わないでいいお金はけちけちしたいし、お金は節約できたことに越したことはないから、「安くておいしい物を」と言いたくなる。その場合は「便宜又好吃的」と言う。
なお、台湾人の心理としては、「安くて……」の後に続く言葉は「量」らしいんだよね。だから、こういうことを言う場合は「便宜又大碗」と言うらしいよ。
だから、台湾人は安くてうまい物がいいと言われると、とても困るかもしれない。