まあ、よく知られているエピソードではあるんだけど、「乾杯」というのは日本語と中国語で意味が違う言葉で、ちょっとした誤解を招くことになる。
そもそも「乾杯」というのは、
日本では、周りの人と飲んでいるグラスを合わせた後、一口飲めばいい儀式で、
あいさつであり、ひとまずそれで場を盛り上げたり、場の共有しているメンバーに親近感を浸透させるしぐさであったりするが、
しかし、台湾では、「乾杯」はグラス(杯)を空にする(乾)という意味であるわけで、一気飲みをしようと提案していることになるのだ。
「乾杯!」と言ってグラスを合わせた後、一気飲みをするのが至上命題になる。場は盛り上がるかもしれないけど、それは日本人が考えているようなものではなくなるような気がする。
日本人が日本の社会の中で言っているのと同じ感覚で「かんぱい」「乾杯」を連発することは、台湾人にはとても驚くことをしていることになるし、
「乾杯」を連発する日本人には一気飲みをする気がないのだから命取りになると言えるだろうし、
「乾杯」と言うくせに一気飲みしないから、不審がられるかもしれないね。
だから、例えば中国語の教科書とかによく書いてある「为你们的幸福干杯!」とあるのは、勉強してもそれをしゃべるチャンスは、少なくとも台湾ではそれほどなさそうだよ。
とはいえ、日本人が「かんぱい!」と言ったところで、その発音が台湾人にはわからないだろうからいいじゃないかと思うかもしれない。
けどさ、少なくとも多少の日本に興味がある台湾人であれば、「かんぱい」が「乾杯」であると認識している可能性は高いよ。
日本のドラマを見れば、乾杯好きの日本人の文化を反映するように、俳優&女優がいろんなドラマのシーンで乾杯をしているわけだ。そして、乾杯をしているときには「かんぱい」という音とともに、台湾で見ていれば必ず「乾杯」という字幕がついている。
台湾人が日本のドラマを見ていて「かんぱい」という音が「乾杯」という漢字として目に飛び込んできたとき、多分、その日本の「乾杯」の行為を台湾での価値感覚でとらえている可能性がないとも限らないんだよね。